(2024.08.29)
海のF1と呼ばれるヨットレース、アメリカズカップのチャレンジャー決定シリーズであるルイ・ヴィトンカップは、8月29日からスタートし、バルセロナで初めて世界最高峰の華麗なるセーリングバトルが繰り広げられます。参戦するのは全6チーム。
カップ防衛チームのニュージーランドは、先週末の予備レガッタにおいて、本戦で使用するAC75艇で初めてレースに出場して見事優勝、続いてこれから開催される2つの挑戦艇決定シリーズの緒戦となるラウンドロビンステージに出場することになっています。
ニュージーランドは予備レガッタ6回のレースでたった1回しか負けておらず、10月の本戦ファイナルでオールド・マグ(アメリカズカップ銀杯のこと)を保持するという彼らの使命は今のところ順調に進んでいるようです。
次のチャレンジャーシリーズでは、挑戦者5チームのうちどこが最も強いのかが明らかになるはずです。
さて、チャンピオンチームNZがチャレンジャーシリーズに出場するのはなぜなのか?
AC75艇“Taihoro”をより熟知するために、ピーター・バーリングと彼のクルーは、10月12日から最後に残った挑戦艇との防衛戦が始まる前に、できるだけ多くのレースに参加する必要があると感じていました。よって、今回の大会ではチャレンジャーシリーズにも参戦することとしました。
チームNZ のポイントは順位にはカウントされません。他の5艇はラウンドロビン1で最下位となって脱落するのを回避するために必死でレースポイントを競い合うことになります。
カップ防衛チームがチャレンジャーシリーズに出場するのは初めてのことではありません。オラクルチームUSA が2017年に参戦したことがあります。
ラウンドロビン1のレースは8日間が予定されており、チームは勝利ごとに1ポイントを獲得します。1日あたり4回の1対1のレースが行われ、チームはそれぞれ2回ずつ対戦します。
チームNZ の順位は関係ありません。彼らは自動的にマッチレースへの出場権を獲得しており、最強の挑戦艇を待っています。
チャレンジャーシリーズでは、5チームの挑戦艇が準決勝に向けて4つのシートを争います。最下位のチームはアメリカズカップから敗退することになります。
会場となるバルセロナ港周辺の緊張が高まっています。挑戦艇にとっては、1ポイント、1ポイントが非常に重要となります。少しでもミスをすれば、悪夢の最下位に転落してしまう可能性があるのです。
使用されるAC75艇の乗組員は8人で、全長75フィートのフォイル式モノハルなので、昨年の予選大会で使用したAC40よりもはるかに大きくなっています。
先週末、3つのチームが技術的な問題を経験しました。ルナ・ロッサは、ボートに供給されたソフトウェアについてチームNZを非難しましたが、チームNZとアメリカズカップの最高責任者であるグラント・ダルトンは、「我々に勝てば、君たち自身でできる」と余裕の反撃をしたのでした。
つまり、王者はシリーズすべてを牛耳れるのです。ヨットの仕様から会場の選定まで、すべての決定権は王者にあるのです。優勝しても授与されるのは銀杯のみ。それでも国の威信を賭けて闘う史上最高のヨットレースに、世界中が注目しています。