アストンマーティン(正式社名:Aston Martin Lagonda Limited)は、その財務パフォーマンスが最近思わしくなかったため、カナダの億万長者ローレンス・ストロール氏から待望のキャッシュインを手にすることにしました。

しかし、この資金投入により、アストンマーティンは電気自動車開発の大幅な遅れなど、いくつかの路線変更が伴うことになりました。ストロール氏は、同社の最大20%を買収し、彼が所有するF1チームの名前を変更することに同意しました。ストロール氏は、2018年にフォース・インディアF1チームを買収、「レーシング・ポイント」と名称変更し、息子をドライバーとしてラインナップに加えています。アストンマーティンと現在協力関係にあるF1チームのレッドブル・レーシングは、アストンマーティンとのパートナーシップは2020年が最終シーズンになると発表しました。これを受けて、2021年からはストロール氏のもと、“アストンマーティン”の名を冠したF1チームが新たに誕生することになります。


ストロール氏はアストンマーティンの16.7%の株式に対して2億4000万ドル以上を支払うと報じられましたが、最終的には20%まで上昇する可能性があると言われています。 彼はまた、同社の取締役会にエグゼクティブチェアマンとして参加することになりました。今回の彼の投資により、アストンマーティンのEV計画に大きな変化が起こるでしょう。 同社の計画している高級EVブランドであるラゴンダの導入は、当初予定の2022年から2025年に延期され、また同社初の電気自動車モデルであるラピードEがその生産を一時停止(無期限)すると報じられています。

自動車ブランドとしての超豪華なオーラにもかかわらず、アストンマーティンは最近、財政的にあまりうまくいっていなかったようです。今回の新たな投資は、F1再編のほか、コスト削減策の一環として電気自動車開発の遅れを伴います。
しかし、同社の新しいSUV車であるDBXは、最近のSUVとクロスオーバーブームを反映して、その見通しは明るいものとなっています。たとえば、ランボルギーニ社が販売しているSUV車のウルスは、2019年上半期の売上の60%近くを占めたといいます。DBXも同様の効果を発揮する可能性があるのです。

今回の新規投資に関しては、ストロール氏と中国の自動車会社ジーリーがテーブルについていましたが、アストンマーティンはストロール氏との契約を強く支持。ボルボやロータスなどのブランドを所有し、メルセデスの筆頭株主でもあるジーリーは、EVの生産を加速して、同社が持つ傘下企業との協力関係を推進したいと考えていました。しかし、アストンマーティンは、電気自動車の開発を犠牲にしても、スーパーカーやレース活動の強みに集中すべきとするストロール氏を選択したのです。
果たして、それがアストンマーティンにとって正しい選択であったかどうか、OO7の新作でも観ながら、考えてみましょうか。
(2020年2月3日)