シガニー・ウイーバーが主演した映画『愛は霧のかなたに』(1988年・原題: Gorillas in the Mist)をご存じでしょうか。ルワンダの森林で18年間にわたりマウンテンゴリラの生態系の調査を行ったアメリカの動物学者、ダイアン・フォッシーの生涯を描いた作品です。愛くるしいマウンテンゴリラですが、かつては密猟による絶滅の危機にありました。そこに孤高の救世主として登場したのが、ダイアン・フォッシーだったのですね。今回は、そんなマウンテンゴリラをほんとに間近で見られるトレッキングを体験させてくれるアフリカのロッジのご紹介です。生涯のバケットリストに入れるべき!と行った人たちが口を揃える素晴らしい施設です。

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Courtesy of Wilderness Safaris

 その施設の名前は、ビサテロッジ。ビサテロッジはルワンダ初の正真正銘のラグジュアリーロッジです。2019年後半には、One&Only Gorilla’s Nestと南アフリカの有名企業シンギタのクイトンダロッジがオープンしますが、相変わらずビサテロッジはルワンダの宝石であることには変わりありません。心配りの見られる建築、サステナビリティへの貢献、ユネスコの世界遺産でもあるヴィルンマッシフ地区に位置する素晴らしいロケーションなど、デザインと環境保護の分野での受賞は数多です。

 ビサテロッジは首都キガリから車で約3時間。(キガリまではナイロビから90分のフライトです。1994年の大量虐殺の悲惨な記憶から、荒廃した不吉な場所を予想するかもしれませんが、空港は近代的で、通りも大変きれいで、人々は明るく街はごく普通に繁栄しているように見えます。)最後の30分を除けばわりと楽な道路が続きます。

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Courtesy of Wilderness Safaris

 最後の30分は四駆車でないとちょっと無理な最後の試練と言ったところでしょうか。最後の30分、でこぼこのひどい道を深い霧にはばまれながら進むと、やっとロッジへの階段が見えてきます。遠くから見ると、ロッジの建物は巨大な鳥の巣の集まりのように見えます。

 待ち受けるスタッフたちがキンヤルワンダ語の歌で出迎えてくれます。標高2,600mという高地の空気の薄さは感じるものの、これからの滞在への期待が大きく膨らむ瞬間でもあります。

 ヴィラまではトレッキングで使う杖を渡されますが、これが慣れない高地の移動には役立ちます。チェックインは簡単です。サインやクレジットカードの提示も必要なし、ホテルについての説明が少しある程度です。ここで出されるジンジャーティーは秀逸で、現地の気候にぴったりで高山病の防止にも役立つとか。

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Courtesy of Wilderness Safaris

 侵食火山円錐丘の中にあるビサテロッジは、わずか6つのヴィラで2017年の夏にオープンしました。ルワンダ政府とここを運営するウィルダネス・サファリは、富裕層向けで、あくまで旅行業にあまり影響のない形にしようと決めたのです。なので、宿泊料は高めです。ローシーズンは2人ひと部屋で2,300米ドルからで、食事と飲み物はオールインクルーシブ。ハイシーズンには3,000米ドルからとなります。こうしたことから、ビサテロッジは世界でも最も高価な部類の施設として認識されています。

 常に最大12人まで。それゆえ、微に入り細に入ったサービスが約束されています。ウィルダネス・サファリのモットーは「“目的”は新たなラグジュアリー」。

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Courtesy of Wilderness Safaris

 ルワンダ政府は、環境保護で有名なウィルダネス・サファリにアプローチ、2019年後半に新たにオープンするふたつの施設も含めて、よきパートナーシップを提案してきたのです。ウィルダネス・サファリはラグジュアリービジネスの作法とその訓練をこの地に持ち込んだだけでなく、サステナビリティと環境保護の思想も浸透させようとしています。

 ロッジ内の移動は要注意。不均等な火山石の階段だらけですから。でも、息も絶え絶え移動を終えると、いつもびっくりするほどの絶景が待ち受けています。

 6つの茅葺きヴィラはそれぞれ違う高さの位置に造られていて、広さは約91㎡。部屋はふたつのスペースに分かれています。黒の大きなバスタブがあるバスルームとベッド、ソファ、デスク、二脚のアームチェアなどが用意された暖炉のあるベッドルームですアメニティは南アフリカのエコフレンドリーなブランド「アフリコロジー」。

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Courtesy of Wilderness Safaris

 部屋と同じ長さのバルコニーがあり、そこからはヴィルンガ・マシフにそびえる山々を見渡す絶景を堪能できます。朝夕には霧がドラマティックにその山々を包み込み、ビサテロッジのヴィラはまさに息を飲むほど感動的です。このロッジに足を踏み入れた瞬間から、あなたはアフリカの最もユニークで美しいロッジで過ごすことになるのです。

 ヴィラの中はドーム型で、壁は編まれた乾燥草で覆われています。床は木製、外のベランダに出るドアは黒のスチールです。その組み合わせがユニークで、高級サファリロッジの伝統的デザインとは一線を画します。

 部屋ではWi-Fi可ですが、さほど強力ではありません。

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Courtesy of Wilderness Safaris
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Courtesy of Wilderness Safaris

 ビサテではフード、ハウスワイン、スピリッツは料金に含まれています。プレミアムワインは別途オーダーできますが、ハウスワインだけでも充分すぎるレベルです。

 食事はメインレストランで。朝食はブフェ形式。ランチはアフリカフュージョン、地元ルワンダの料理、ほかにインターナショナルも用意されています。陽の降りそそぐテラス席で召し上がれ。

 ディナーはさらに洗練されたメニューで、ワインの組み合わせも最高。3泊以上なら、伝統的ルワンダ料理もご賞味あれ。これは料理だけでなく、それらを供する時のマナーもルワンダの伝統に則っているのです。

 すべての料理はゼロからハンドメイドで用意されます。ソース、パスタ、グラノラ、パン、サラダなどなど、そしてそれらはすべてが美味いのです。何よりやはりルワンダ料理には感銘を受けることでしょう。

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Courtesy of Wilderness Safaris
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Courtesy of Wilderness Safaris

 パブリックエリアもユニークで美しく、ルワンダの家々で見られる要素がたくさん採用されています。チェックインをする場所には暖炉があり、夕食前にはドリンクが供され、そこではゲストたちやマネジメントチームが語り合う居心地のよい場所になっています。

約46人のスタッフのレベルは非常に高く、ゲストひとりに対するスタッフの数は充分です。サービスは細やかで、バトラー的なしつけがなされています。トレッキングに出かける時には一緒に用意もしてくれますし、部屋にいたらすぐにスタッフが魔法のように飲み物と軽いスナックを用意してくれます。

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Courtesy of Wilderness Safaris
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Courtesy of Wilderness Safaris

 ビサテロッジには、村の散策やさまざまな難易度のハイキングを含む小旅行のプログラムがあります。1967年にダイアン・フォッシーによって設立されたKarisoke Research Centerは、マウンテンゴリラを見るためのトレッキングを用意しています。現在、約900頭のマウンテンゴリラが野生で生き残っています。

 マウンテンゴリラは寒さの中で生活することができます。ふさふさした長い毛を持つことで、低地のゴリラと区別されます。オスの体重は平均430ポンド(約195㎏)ですが、主なシルバーバックは500ポンドをはるかに超えるまで成長し、身長は約6フィートほどあります。現在、ボルケーノズ国立公園には12のグループがあり、それぞれにおよそ20から25頭のゴリラがいます。

 彼らを見るためには密林の急な斜面を5マイル以上トレッキングすることが必要です。最大8人のゲストが公園当局によって特定のグループに割り当てられます。1日合計96人、 そしてゴリラの近くできっちり1時間過ごすことが許可されています。1日のトレッキング許可料は最近1,500ドルに引き上げられました。明らかに、これは富裕層以外の人々を排除するという結果も生みますが、あくまで値上げの主な目的は、以前のように2、3回ではなく、ゴリラ訪問を一日1回だけ許可するということでした。

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Courtesy of Wilderness Safaris

 朝7時頃に公園の本部に到着し、ゲストたちは25人ほどのグループに割りふられます。20分のドライブの後で歩道に到着。ビサテからステッキ、ゲイター、そして手袋などが提供されます。ゲストたちはガイドに従って森の中へ出発します。

約1時間後、ガイドたちはゲストたちを制止して、杖、三脚など、神経質なゴリラが誤って銃であると勘違いしかねないものをしまうよう指示します。今日では火山国立公園で密猟は事実上排除されていますが、ゴリラたちは日常的に狩猟されていた頃の記憶が刷り込まれているようです。

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 ゲストたちは気づかないうちに、巨大な生物がたった3〜4ヤードの距離のところに座って、野生のセロリの棒をこっそり噛んでいるのに遭遇するはずです。マウンテンゴリラたちは、そんなゲストたちを完全に無関心な表情で出迎えます。カメラのシャッター音にも動じない、リラックスしたその堂々たる姿には感動を覚えずにはいられません。それはほぼすべてのゲストたちの期待を遥かに超えた歓びと安寧をもたらしてくれるはずです。

 ビサテロッジはゲストに格別な経験を提供するだけでなく、地域の森林再生にも貢献しています。そこは無秩序な開拓で国立公園は侵食され、ゴリラたちの土地はひどいことになっていました。

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 ビサテロッジは毎年最低1万本の植林を行ない、初年度だけでも2万本を植えました。それはビサテロッジがあるボルケイノーズ国立公園内でエリアを拡大中です。

 115の農家から172区画の土地をロッジ用に購入、加えて、農地を森林に戻すことにしました。こうしたことが住居の向上に役立ったし、投資ファンドの提供でさらなるモチベーションも起こりました。

 森林再生は土着の品種を使用しており、森林の育生にともない、地元の固有種が戻ってくるのです。あのマウンテンゴリラたちがロッジの周りをうろうろするなんて、一生に一度の体験になるのは間違いなしです。ただこれは数年がかりの時間のかかるプロジェクトです。

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Courtesy of Wilderness Safaris

 さて、1泊3千ドル近くするビサテロッジに行く価値はあるのか--。その答えは「もちろん!」。ゴリラトレッキングを体験するのに、これほど贅沢な施設はありません。そのロケーションとロッジのデザイン、そして行き届いたスタッフたちのサービス。難点があるとすれば、チェックアウトの時のあまりの淋しさ?でしょうか。


Bisate Lodge

Volcanoes National Park, Ruhengeri, Rwanda

電話:+27-11 257 5000 

https://wilderness-safaris.com/our-camps/camps/bisate-lodge

参考:2020年3月1日~5月31日 1泊料金の目安 約¥173,000 プランにより変動します。同6月1日~10月31日 1泊料金の目安 約¥253,000 プランにより変動します。

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