(2024.01.02)
皆様、明けましておめでとうございます!
さあ、2024年はどこへ出かけましょうか。まだ見ぬ秘密のゴージャスリゾートに人知れず没入する快楽を今年も存分に味わいましょう。
新年最初にご紹介するのは、地中海に浮かぶサルデーニャ島です。日本人でもお洒落な方なら毎夏、豪華なヴィラを貸し切って、ひと月以上のバカンスを楽しむ常連さんも多々いらっしゃいますね。

サルデーニャといえば、35マイル(約56km)にわたるコスタ・スメラルダ(エメラルド・コースト)が有名です。島の北東部に位置する美しいポルト・チェルヴォの村は、ヨーロッパで最も高価な住宅や世界で最も贅沢なホテルが点在し、上流階級やセレブリティ、オリガルヒ、スーパーモデルなどのハイプロファイルな方々が優雅な遊びを繰り広げる場所となっています。

このサルデーニャとは切っても切れない深い縁ある人物がいます。世界数百万のイスマイール派ムスリムの最高指導者であり実業家、慈善家でもある、アガ・カーン4世ことシャー・カリーム・アル・フセイニ王子です。20歳の大学生としてハーバード大学でイスラム史を学んでいた頃、祖父の後を継いでアガ・カーン(トルコ語とペルシャ語の称号で「指揮官の長」を意味する)となりました。フォーブスはアガ・カーンを推定純資産8億米ドル(2010年)で世界で最も裕福な王族10人の一人であると評しています。アガ・カーンの慈善団体は、主にアフリカ、アジア、中東で年間約6億米ドルを支出しています。
1958年、アガ・カーンがハーバードを卒業する頃、英国の銀行家ジョン・ダンカン・ミラーは、世界銀行の副総裁としてサルデーニャに、蚊駆除プログラムの進捗状況を確認するために訪れました。これは島でのマラリアの発生を防ぐためのものでした。

サルデーニャを航海中、ミラーはその海岸の美しさに魅了され、一団の投資家を集めてその土地を購入しました。アガ・カーンもその投資家の一員でしたが、土地を購入する前にその地域を見ることはありませんでした。伝えられるところによれば、彼が初めてその地域を訪れたのは1958年の冬で、そこには舗装された道路、電気、水道すらなく、彼はこれは愚かな投資だと思いました。しかし、翌夏、再訪した彼は、ヨットから改めてその土地を見て、ポルト・チェルヴォとコスタ・スメラルダがどうなるかを想像したのです。

「ここの海は特に美しい色合いを見せ、最も濃い青から最も純粋な緑まで広がっています」とアガ・カーンは1964年のインタビューで語っています。「数十もの上質な砂浜、荒々しい緑と灰色の山々が海面にそそり立っています。紫や黄色、赤や青の花々が空気を香り立たせるじゅうたんのようです。気候は亜熱帯的で、南フランスの混雑したリゾートよりもはるかに温暖です。温度計は摂氏11度を下回ることはありません」
コスタ・スメラルダの美しさを保護し、過度な建設を防ぐために、アガ・カーンと彼の仲間の投資家は厳格な建築およびゾーニングの基準を設けました。これらの規制は、建物が山岳地帯の風景に調和し、既存の住居と衝突しないようにすることを求めました。彼らはパステルカラーの構造物を好み、それらを白く塗ることを禁止しました。アガ・カーンは1965年のインタビューで、「私たちはこの場所がとても美しいと感じていたし、とても幸せでした。だから非常に注意を払わなければならないと決定したのです。そうでなければ、その場所はただの醜く、過密な観光地になってしまうでしょうから」と語っています。

アガ・カーン4世の資力は以下の通り。
【競走馬】
アガ・カーンは、祖父が設立したサラブレッドの厩舎や繁殖牧場を受け継ぎました。アイルランドとフランスに複数の施設を構え、これは世界でも最大かつ最も成功した競走馬および繁殖の運営企業ひとつです。
【スーパーヨット】
2014年に、彼はアラムシャール(Alamshar)という名前の164フィートのヨットを購入しています。これは彼の貴重なサラブレッドの一頭にちなんで名付けられました。その価格は約5千万ドル。
【プライベートアイランド】
バハマのエクスマケイランド・アンド・シー・パーク内に位置するベル島を所有しています。島のメインハウスは、水を見下ろすテラスを備えたクリーム色のモダンな建造物です。
【カスタムカー】
アガ・カーンは若い頃、マセラティに思い入れがありました。1962年、マセラティは彼のために特注の5000GTクーペを製造、これが初代クアトロポルテの先駆けとなりました。1974年には、エクストラハイのルーフがついたカスタムのクアトロポルテを受け取っています。
【プライベート航空機】
アガ・カーンは少なくとも2機のジェット機と1機のヘリコプターを所有していますが、ビジネスや慈善活動のために行う多くの移動があるため、プライベートジェットは贅沢ではなく必需品であると述べています。
さて、ポルトチェルボの黄金の時代を築いた主人公アガ・カーン4世は、2003年に2400ヘクタールの土地、4つのホテル、Peveroゴルフクラブ、レストラン、ポルトチェルボの接岸地域一帯を投資会社Colony Capital(コロニーキャピタル)に3億ユーロ(約390億円)で売却しました。これによりエメラルド海岸の伝説的かつ排他的な繁栄は終りを告げたかに見えますが、その自然の美しさと優美で洗練された雰囲気は、相変わらず旅の熟練者たちの格別なハイダウェイなのです。
アガ・カーン4世の一番のお気に入りのビーチであったスピアッジャ・デル・プリンチペ(王子様のビーチ)で過ごす今夏のプランをそろそろ立てられてはいかがでしょう。